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【デザイン経営】パーパスとは?理念や使命だけでないデザイン力

「デザイン経営」という言葉が頻繁に使われるようになって久しいですが、「デザイン」という言葉の意味を誤解しないことが大切です。デザインというと、日本語では「意匠」などと訳され、色や形など外面的な造形や設計にばかり目が行きがちではないでしょうか。

しかし、「デザイン経営」における「デザイン」はちょっと違います。もともと経済産業省と特許庁が出した宣言にもとづく「デザイン経営」ですが、その宣言においては、ユーザーの視点で社会のニーズがどこにあるのかを見極めて、そのニーズに企業がどのような新しい価値を提供できるかを考えることが「デザイン」とされています。同時に、イノベーションの実現にはデザインの介在が欠かせないとの説明もあります。要は、デザイン経営の狙いとは、一つ一つの企業がイノベーションを起こす力を高めることにあるのでしょう。

たとえば、企業理念だけを掲げるのではなく、その理念が実際の製品やサービスの提供まで一貫するように具体的に経営戦略等を設計することが大切だということです。また、企業側の視点だけでなく、製品やサービスを受け取るユーザーがどのような体験を得ることになるかを考えて、経営をデザインすることも欠かせません。簡単にまとめると、製品やサービスを中心に考える企業を主体とした考え方から、ユーザーの思いや体験を中心に据えた経営を目指そうということです。

わざわざ「デザイン経営」といった言い方をしなくても、このような考え方は昔から日本にもありましたし、実際にそれができている企業が長年にわたって業績を維持していると言えるのではないでしょうか。ただ、それを再確認するという意味では、あえて「デザイン経営」と宣言することにも意義はあるでしょう。こうやって宣言することで、一部の企業だけでなく、あらゆる企業が自社のブランド価値を向上させ、イノベーションを起こせる力を持てるように経営の舵を取る方向に向かうのではないでしょうか。

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デザイン経営には「志」や「存在意義」という深い意味のパーパスが求められる

ところで、企業理念やビジョン、ミッションなどといった目指すべきものを掲げている企業は多いですが、デザイン経営にはそれだけでなく、もう一つ「パーパス」というものも必要だと言われるようになってきました。「パーパス」とは英語の「purpose」ですから、「目的」といった意味ですが、この場合は、より突っ込んで「志」や「存在意義」という深い意味です。つまり、デザイン経営の実現には、従来よく見られたような企業理念や使命といったものだけでなく、企業が存在する意義や、社会にどのような変革を起こしたいかといった志も必要だと言われています。

実際、昨今、世界の状況が大きく変わることになった事態が発生したこともあり、世界中のどの企業も自社の意義を見直すことを余儀なくされました。緊急事態に直面して、もう一度存在意義から確認しようという流れが加速してえるとも言えるのではないでしょうか。それが「パーパス」です。

パーパスを存在意義や志よりもわかりやすく言えば、そもそもなぜ企業が存在しているのかを明らかにするということでしょう。もちろんどこの企業もその企業なりに意義を見出して存在しているわけですが、それを自社だけでなくユーザーや社会にも広く示していく必要性が高まってきたということです。

ですので、これまでのようなどの企業にも当てはまるような理念や使命だけでなく、その企業ならではの明確なパーパスが求められているわけです。たとえば、「人々の生活をより良くすることを目指して社会に貢献する」のような理念では、どの企業にも当てはまります。具体的にそれをどうやって達成していくのかが明らかではありません。そこで、パーパスによって、具体的にどうやって理念なりミッションなりを達成するのかを問い直すことが求められていると言えるでしょう。

企業側の一方的な視点ではなく、個々のユーザーの視点を意識しながら設定すべきなのが「パーパス」ですが、これを明確にしておくことで、自社の社員だけでなく、一般の人たちにも広く共感を呼ぶことができます。すでにそれを実現しているのが、アメリカ発の有名コーヒーチェーンです。

1970年代に誕生して以降、順調に規模を拡大してきたこのチェーンは、2008年には深刻な業績不振に陥りました。それを機にパーパスの見直しが行われたのです。「1杯のコーヒーから、一人のお客様から、また、一つのコミュニティから」社会を活力豊かにするという新たなパーパスを提示したことで、以前には見られなかった一人ひとりの顧客との絆が生まれました。それが新たな商品開発にもつながったことから、パーパスの重要性を再認識し、それを世界中のスタッフに浸透させるよう努めています。その甲斐あって、驚異的な業績回復を果たしたことはご存じのとおりです。

デザイン経営とだけ言われても、漠然として何から手を付けるべきかもわかりませんが、上記のようなパーパスを起点に考えていくと進むべき道が見えてくるのではないでしょうか。社員一人ひとりが、「何を私たちは目指して企業活動を行っているのか」から考え直してみてください。

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デザイン経営により企業のデザイン力を高める必要性と障害

またイノベーションを起こす方法として、このデザイン的な考え方を取り入れるデザイン経営という方法は効果的です。そもそも、このデザイン経営は企業主体の商品やサービスの提供という考え方ではなく、ユーザーをメインに考えることで、ユーザーや市場のニーズを見つけ、そのニーズを満たすためにはどんな商品やサービスの提供が必要なのかという点を模索していきます。それにより、中小企業でもユーザーが求める商品やサービスを提供できる土壌が作られ、企業やブランド、商品が持つブランド力も同時に高まるという相乗効果が期待できます。

グローバル社会においては、企業が商品やサービスを提供できる市場は、日本市場だけではありません。世界という広い市場があります。ブランド力を高めることによって国内外から多くのユーザーを獲得し、国際市場における競争力を高められるというメリットも期待できるでしょう。

このデザイン的な考え方を取り入れながらブランド力を高めるという方法は、経済産業省と特許庁が立ち上げた国家プロジェクトの一つでもあります。欧米では既に企業のデザイン力を高めるためのマーケティング戦略を積極的に取り入れていて、中小企業にとっては特に大きな成果を出しています。日本においても、今後は経営のデザイン力を高めることによって、企業の規模にかかわらず世界で通用するブランド力を手に入れることができるのではないでしょうか。

企業やブランドのデザイン力を高めるためには、その背景を理解した上で、すでに成功しているデザイン経営方法を参考にするのがおすすめです。

経済産業省と特許庁が立ち上げた国家プロジェクトの一つ『デザイン経営』が注目された背景には、市場やニーズの多様化があります。一人ひとりのニーズが変化したことによって、かゆい所に手が届くような商品やサービスを求めるユーザーが増えたのです。好みのブランドや、気に入ったデザインの商品を使うユーザーが増えたことで、高い顧客満足度が求められるようになりましたし、使いやすさや機能などの実用性に加えて、企業の想いや商品開発の背景にあるストーリーに共感して商品やサービスを選ぶユーザーが多くなったのです。そのために、企業は高いデザイン力が求められるようになりました。デザインというのは、ロゴやパッケージ、商品のデザインなどユーザーが視覚的に評価できるVI開発(Visual Identity)だけでなく、ビジネスデザインやプロダクトデザインなど、幅広いデザイン開発が含まれています。

企業のデザイン力を高めるためには、何から取り組めばよいのか?

1つ目に取り組みたいのは、
事業や製品、サービスの開発において、経営デザイナーが参加するという方法です。視覚的なデザインを専門的に取り扱うデザイナーが、商品開発の最初のプロセスから関わることによって、デザイン面で妥協しない製品やサービスの開発が可能となります。

2つ目に取り組みたいのは、
ユーザーが潜在的に持っているニーズを探り、デザインに反映させるという方法です。市場の動向やトレンドを含めたユーザーのニーズを観察手法という方法で探ることで、経営デザインに活かすことができます。

3つ目に取り組みたいのは、
アジャイル型の開発モデルを取り入れるという方法です。これは、市場やユーザーのニーズを観察した上で、最初に仮説を立てます。その仮説を元にして試作を作り出し、ユーザーからの反応を取り入れながら仮説と試作のプロセスを何回か繰り返すというものです。この作業は、コストと時間がかかるというデメリットがありますが、最終的にユーザーへ提供する商品やサービスの質が高くなるという大きなメリットが期待できます。

4つ目に取り組みたいのは、
社内における人材確保です。いくらデザイン経営に力を注ぎたいとか考えていても、スキルやノウハウを持つ人材が社内にいないのでは、先に進むことは難しいでしょう。そのため、スキルやノウハウを持つ人材を外部から取り入れながら、社内で育成するなどの取り組みによって、デザイン経営に精通した人材が活躍できる環境が生まれます。

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最後に

企業のデザイン力を高める取り組みは、全ての企業でスムーズに進むわけではありません。時には、社内の人材および社風などが、大きな壁となってしまうこともあります。デザイン経営は、経営手法の中では比較的新しい戦略方法です。そのため、歴史のある企業の中には、経営陣がデザイン経営に対して難色を示す可能性が考えられます。その場合には、経営陣への経営デザインの理解を深めるための取り組みが必要となる他、社内における経営デザイン力アップのための啓蒙活動が求められます。

また、デザイン力は売上などの数値で確認できるものではありません。また、結果や効果を実感するには、長い期間を要することが多いものです。そのため、効果をなかなか数値として実感できない点が、デメリットとなってしまうことがあります。社内全体が、デザイン経営はそういうものだと納得していれば良いのですが、そうでない場合には、デザイン経営についての疑問の声が起こるリスクがあるかもしれません。

そこで、パーパスの重要性を再認識し、スタッフに浸透させるよう努めていれば、売上などの数値だけではなく、「デザイン経営」による考え方から、上記のようなパーパスを起点に考えていくと「何を私たちは目指して企業活動を行っているのか」という進むべき道も、しっかり見えてくるのではないでしょうか。


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