最終更新日: 2023年4月5日
現在の経営スタイルとして、多くの企業はブランド力を高めることを目標のひとつとするケースも多いかと思います。ブランド力が高まれば、多くのユーザーからブランドや商品について理解してもらえるうえに、認知度も自然と高まってくるからです。また、実際にそのブランドを利用した顧客に満足を提供できれば、企業やブランドへの信頼性にもつながります。その結果、このブランドなら信用できるという理由で、競合他社の商品やサービスではなく、自社のものを選んでもらえるという経営にとっても大きなメリットとなります。
「ブランド力」はブランディングによって確立するもの
そもそも、ブランド力とは何のことなのでしょうか?ブランドが持つ力だと理解することは難しくありませんが、具体的にどんな力なのかをより詳しく理解することは、経営においても役立ちます。
ブランド力とは、商品やサービスなど、そのブランドから提供される物に対して、ブランドという名前が持っている価値のことを示します。ブランドには、ブランド名がついているだけでなく、ロゴやパッケージなど、ブランド名を聞いて視覚的にイメージする人も少なくありません。そのため、ブランドには、ブランド名やロゴなど、幅広い媒体が含まれると考えられます。
それでは、ブランド力を高めるための経営においては、具体的に何を目標として開発や戦略を行ったらよいのでしょうか?
たとえば、ブランド力アップを目標としたデザイン経営による考え方では、ブランドに対する信頼とブランドが持つ価値という2つの強力なイメージを顧客へ提供することを目的とします。この2つは、顧客がどのブランドに対して必ず持つもので、日常の体験の中で培われるという特徴があります。
「以前このブランドを使ってみて、とても満足した。だから今回もこのブランドの商品を使ってみようかな。」とプラスのイメージを与えることは、ブランド力を高めるうえでは理想的なゴールと言えるでしょう。しかし一方で、「このブランドは以前使ったことがあって、使い勝手や機能性がイマイチだった。しかも品質に対して割高感もある。だから今回は、別のブランドを選ぼう。」というマイナスのイメージを顧客が持つことは、ブランドとしては好ましくありません。
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ブランド力を高める「ブランディング戦略」としての考え方
ブランド力を高めるためには、ブランディング戦略が必要不可欠です。ブランディング戦略は、ブランドや商品がターゲットとする特定のユーザー層に対して集中的にアピールするマーケティング戦略のことで、ブランドのロゴやパッケージなどは、ターゲット層に合わせて開発していきます。
ブランディングにおいては、価格設定も大切な要素の一つとなります。企業が手掛けるブランドや商品は、市場には競合他社が複数ある場合が少なくありません。顧客は、ショッピングの度に複数の商品を比較検討するわけですが、その際にはコスパもチェックするでしょう。上記のように、品質に対して割高感があるというイメージを与えてしまうのでは、顧客は次に同じブランドを購入したいとは思わないのではないでしょうか。そうした事態を避けるには、ブランドや商品の強みをアピールしながらも、市場に存在する競合他社の類似商品をリサーチしながら、適正価格を見つけなければいけません。
ただしブランドや商品によっては、必ずしも低価格であればよいというわけではありません。ハイエンドブランドなどは、品質とブランドが持つ高級なイメージに顧客が賛同するからこそ、それに見合う価格を支払います。ブランドが持つイメージと品質、そして価格のバランスが取れていることは、ブランディングによって顧客から期待通りの反応を得るためには、必要不可欠な要素です。
ブランディングによって、顧客を引き寄せる効果が期待できます。近年では、ユーザーの嗜好が多様化しており、ユーザーのニーズを満たせる商品やサービス、そしてユーザーが共感できるブランドや商品が多く選ばれる傾向があります。多くのユーザーが欲しいと考えている商品で、世界中に全く存在せず、自社の商品が世界で一つだけ存在するのなら、ブランディングを行わなくてもユーザーからのニーズが高いために、高いブランド力を手にすることができます。しかし、多種多様な商品やサービスが存在する昨今においては、競合他社がゼロという可能性は稀です。そのため、数ある競合他社と比較検討をしながら、自社商品やサービスの独自性や唯一無二の価値をアピールし、ユーザーのニーズに訴求するブランディングが必要なのです。
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ブランド力は常に変動するもの、情緒的価値にもチューニングが必要
適切なブランディングを行うことで、ブランド力を高めることができます。しかしブランド力は常に変動するものなので、期待通りのブランド力を達成したからと言っても安心はできません。ブランディングにおいて企画や開発、そして運用が必要なように、ブランド力の維持に関しても、運用という作業は必要です。ブランド力は、ユーザーからの評価によって変化します。商品やサービスに対するユーザーからの声を取り入れながら、価格調整や商品開発に活かし、「やっぱりこのブランドは安心できる」という固定イメージを顧客に持ってもらうための努力と工夫は大切です。近年では、ネットを使ったアンケートなど、ユーザーの声を吸い上げる方法はたくさんあります。ブランド力を高めるためには、ブランディングを行いながら、たゆまぬ調整作業(チューニング)を継続して行いましょう。
ブランド力の向上や、商品そのものの購買を促進するためには、消費者の心に訴えることが最も重要な要素の一つとなります。この点において、情緒的価値を高める取り組みは、購買意欲を高めるために強い影響力がありますし、ブランドの固定ファンをつくり上げるためにも重要なものとなります。
ブランディングによって向上する「情緒的価値」とは?
情緒的価値というのは、ターゲットの感覚とか感情に訴えて、心に残る経験を与えることを意味します。
たとえば、商品やサービスを利用した人が、その使い心地に感動したとか、かっこいいファッションでファンになったという形です。
また、情緒的価値は商品の利用だけでなく、マーケティングにおいても重視したいポイントです。CMを見て感動したりかっこいいと思っていただき、それがブランドへの印象を高めるものとなったり、すぐに購入という行動に促すものとなったりします。このように、感情に影響を与えるような商品、そしてマーケティングを提供することが重要なわけです。
情緒的価値を与えるためには、消費者へのアプローチ法をじっくりと考える必要があります。単に、商品やサービスが優れているとか、今までにない機能やスペックを持っているというだけでは、その良さは分かるものの感情までは動かされません。このように、情緒的価値を高めるためには、情報を伝えたりメリットを強調するだけでは不十分なのです。逆に言うと、何か商品の優れている点を説明しなくても、消費者の感情に訴えることもできます。もちろん、マーケティングにおいては、商品の特徴と消費者の感情という、二つの面を同時に考えた手法を取るべきです。しかし、どちらかというと、商品の説明という表面的な情報提供に終わってしまう傾向が強いため、情緒的価値の方により意識を傾けないと、バランスの悪い手法となってしまう恐れがあるのです。
何よりも、マーケティングを行っていく上で、情緒的価値というのはブランド価値と強い関係性があります。ユーザーがブランドに対して抱く感情を高めることができれば、情緒的価値も上がるからです。そのため、ブランド戦略を立てる段階で、この消費者の感情に訴える手法についても一緒に検討すべきです。それは、ブランドが持つこだわりや歴史、携わるスタッフたちが織りなすストーリーといった要素を使って、心に直接訴えるようなアピールをすることが含まれます。そして、ブランドイメージを特徴づけるデザインを考案するということも、非常に重要な役割を果たします。明確なブランディングデザインがあれば、それを見て消費者は何かしらの感情を呼び起されることがあるからです。
こうした観点で見ると、ブランドのデザインを決めたり、それぞれの商品パッケージを制作したりする時には、情緒的価値を高めるものかという点を検討材料に含めるべきだと分かります。もっともこれは簡単にできるものではありません、それぞれの企業によって訴えるべき内容というのは大きく違うものです。決まった手法やデザインコンセプトがあるわけではありませんので、それぞれのセンスやノウハウが問われるところとなります。
といっても、情緒的価値を高めるプロセスを考えると、いくつかのコツがあることも理解できます。たとえば、消費者の感情というのは、経験と大きな関係があるということです。自分へのご褒美のためにたまに購入する商品というのは、そのブランディングデザインやパッケージを見ただけで、その人を幸せにするものです。学生時代に熱中していたスポーツのユニフォームやシューズのブランドなどは、それを見る時に熱狂や懐かしさを与えることがあります。このように、デザインや商品そのものを見た時に、それと関係のある経験を思い出すことができれば成功なのです。この関係性を利用して、感情に訴えるマーケティングを考案することも可能です。一つの例としては、ブランドや商品を使って良い経験をした人のストーリを取り上げて、チラシやCM、動画に仕上げることです。消費者は自分の経験ではありませんが、登場する人物のストーリーを見て共感し、自分のことのように感情を動かされるわけです。
新商品をアピールする時などは、実際に商品を利用した経験を持つ人はいません。そんな時は、開発や製造に携わったスタッフの経験を取り上げるというのも、効果的な手法です。どんな思いで開発をしてきたのか、製造するに当たってどんな苦労があったのかなどを一つのストーリーにすることによって、消費者の心に訴えることができます。これは、開発に至るまでの流れを映像にすることによっても実現できますし、開発に携わった人へのインタビューやドキュメンタリーという形でも行えます。
こうしたストーリーをブランドイメージの中に取り込むということも、多くの企業で行っている点です。商品デザインやブランディングデザインを決める時にも、消費者の体験や開発、製造に携わったスタッフたちの思いが伝わるような形で制作を進めたいものです。
これからブランド化をお考えの皆様。ブランディング、リ・ブランディングをお考えの皆様。
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