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これからの「デザイン経営」と第4次産業革命における役割、効果

これからの「デザイン経営」と第4次産業革命における役割、効果

AIやロボットによる、従来人間によって行われていた労働の補助・代替などが可能となることが実現可能となってきた今、世界は第四次産業革命を迎えているといわれています。IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどにより、世の中の産業構造が変わろうとする過渡期の今、日本企業がかつてのように世界で大きな存在となるには何が必要なのでしょう。

たとえば、ロボット産業は日本の得意分野であり、IFR(国際ロボット連盟)の発表でも2017年時点で日本メーカーの産業用ロボットは、世界販売台数の56%を占めています。

しかし、企業の時価総額ランキングやIMD(国際経営開発研究所)によると、国際競争力において、日本は世界に大きな差をつけられているのが現状です。この現状を打破するために理解しておくべきことが、この「デザイン経営」であり、その役割や投資効果についてお伝えします。

参照:第1節 第4次産業革命のインパクト/内閣府

デザイン経営の役割

2010年6月、経済産業省が発表した「産業構造ビジョン2010」。このなかで、世界GDPの占めるシェアの推移、IMD世界競争力順位の変遷などで、日本の順位が大きく落ちていることを示したうえで、日本経済は行き詰まっているとしています。

それから10年、その状況は好転することはなく、IMD世界競争力順位は2010年、27位が2019年には30位に落ちています。さらには2022年版における日本の競争力順位は34位と、徐々に順位を落としている。

また、以前は日本の企業が上位を占めていた時価総額ランキングも、現在ではベスト30までに1社入っている程度という状況です。そして、現在、日本企業に代わって上位の座にいる企業の1つが、デザイン経営を体現しているともいわれるアメリカのApple社。工業製品に工芸性を持ち込むことで、ユーザーに豊かな体験をもたらし、高いブランド・ロイヤリティを獲得する。このデザイン経営の本質を誠実に実現しているのが、Apple社です。

そもそもデザイン経営とは、ブランド構築に資するデザイン、そしてイノベーションに資するデザインを掛け合わせることで、企業の産業競争力向上に寄与するものです。

従来、ビジネスにおけるデザインといえば、グラフィック、ファッションといった外見、見た目の部分のみを指す言葉でした。しかし、先述したように、現在の世界ではAppleを始め、多くの企業がビジネスモデルの構築の中心にデザインを置いて活動を行っています。

今後、日本の企業が世界と戦っていくうえでも、この「デザイン経営」が果たす役割を理解することが重要なポイントとなっています。

【関連記事】デザイン経営とは?企業活動にデザインの考えを取り入れる方法

日本企業のデザインに対する考え方

日本企業は、1980年代には多くの意匠登録がありました。しかし1990年代以降は低迷状態にあり、そのまま現在にまで至っています。その大きな理由の1つとして考えられるのが、日本企業のデザインに対する考え方です。

日本では、イノベーションといえば、研究開発によって新しい技術を生み出すことと理解されています。それはイノベーションの日本語訳が「技術革新」であることからも明らかです。しかし、海外で技術革新といえば、テクノロジカルイノベーションであり、イノベーションの本来の意味は、発明を実用化し、その結果として社会を変革することです。

これを実現させるうえで重要なことは、単純に革新的な技術を開発することではありません。社会のニーズを利用者視点で見極めること、そのうえで新しい価値に結び付けることが重要であり、利用者視点で見極めるためのポイントがデザインです。

現在の日本企業はそうしたイノベーションの本来の意味を理解しきれていないケースが多く、それが、1990年以降の低迷につながっていると考えられます。実際、海外企業の多くは、特許出願が増えた後に意匠登録が増えていることからも、本来のイノベーションを理解し、デザイン経営を実践していることが伺い知れます。

そうした意味でも、日本企業もイノベーションの本質を理解し、イノベーション力を向上させること、そのうえでブランド力向上にもデザインの視点を持って取り組むことが必須であるといえます。

デザイン経営を経営者が意識すべき理由とは?

そもそも、このデザイン経営は、マーケティングや経営戦略の中にデザインの効果を含めることを指しています。特許庁が2017年に、産業競争力を高めるための一つの取り組みとしてデザイン経営の効果を強調した宣言を採択しています。ここでは、ブランドを構築したり新しいサービスや商品を開発するに当たって、デザインを重視することによって、より競争力を高められるというものです。そして、ユーザー目線での問題の洗い出しをして、斬新な発想によって解決策を作ることで、今までにないサービスやマーケティング手法、経営戦略につながることを目標としています。

出典:「デザイン経営」宣言/経済産業省

こうした宣言の概要と共に、具体的な取り組みも示されています。たとえば、経営陣の中にデザインを担当する責任者であるCDOなどが参画するという点があります。商品開発やマーケティングの指揮を執るチームの中に、デザインのプロが入ることで、このジャンルにおける影響力を高めることができます。これに伴い、事業全体のプランニングやサービスの開発をするプロセスでも、最初期の段階からデザイン担当者が参加することも、一つの取り組みとして挙げられています。こうした取り組みの重要性は理解できるものの、実際に企業内に取り入れていくのは難しいのも現状です。そこで、社内にデザイン経営について推進を促すための部署を作ることも勧められています。

デザイン経営の考えは、社内全体に浸透していくものとなります。たとえば、よりデザイン分野の人材を採用したり育成したりするために、力を注いでいくことができます。他にも、デザインという観点から、マーケットに存在する潜在ニーズを見つけて、そこに焦点を合わせた戦略を立てることが可能となります。こうした点を促進するためには、効率的なプロセスを持つことや検証過程を知っておくことが重要です。そこで、デザイン関連の改善や新たな取り組みをしたことで、どんな結果が出るのかをチェックするための指標を設けたり、プロセスの視覚化をしたりすることが求められます。

このように、デザイン経営は企業が重視するべき思考パターンとなっています。といっても、大企業はともかく中小企業だと、なかなかデザインに力を入れるのが難しいケースもあります。しかし、デザイン経営という考え方は、むしろ中小企業にとってメリットが大きいです。というのも、これは単に見栄えの良いデザインのパッケージやポスターを作るということではないからです。それよりも、考案したデザインを販売した後、それがどんな反応で受け止められるかフィードバックを分析して、さらに改良を重ねることを意味しています。こうした活動を繰り返すことで、マーケットの広い層に認知されるブランド力の押し上げにつながります。大企業と比較して中小企業が苦労するものの一つは、ブランド力が弱いということですが、デザイン経営を意識することで強いブランド価値を生み出せるようになるわけです。

また、イノベーションの創出という意味でも、デザイン経営は大きな力を持ちます。この考えは、良い意匠を制作するということにとどまらず、デザイナーが持っている思考パターンを経営に生かしていくというものです。感性やユーザーの感情といったものを重視して、新しい観点で物事をチェックして、新しいアプローチで問題を解決するというプロセスを取ることができるようになります。こうしたデザイナー的な思考パターンで経営をすることで、今までにないマーケティング戦略や商品、サービスの開発ができるようになります。独創的な開発ができれば、中小企業であっても大きなシェアを獲得できる可能性も高まりますので、大きなメリットを生み出します。

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デザインの投資効果

「デザインを経営の中心に据える」。言葉では理解できたとしても、企業として経営をしていくうえでは、その結果が利益に結び付くのかどうかを計測することも忘れてはなりません。

すでに世界の多くの企業ではデザイン経営が浸透しているとはいうものの、その投資効果はどの程度のものなのか。それについてはいくつかのデータがあります。

欧米では、デザインに積極的に投資を行う企業のパフォーマンスについて研究が進められています。
ある調査機関の調査によると、デザインに投資することで、その4倍の利益が得られると発表。また、別の調査では、デザインを重視する企業株価が全体と比較して過去10年間で2.1倍成長しているという結果も出ています。

では、実際に自社でデザイン投資を実施する際、どのような指標で検証すべきなのか。それに関して、リベルタス・コンサルティングが2016年3月に発表した、意匠登録に積極的である企業に対するアンケート結果から見てみます。

費用対効果算定に取り組んでいる企業は全体の3分の1程度ですが、その評価指標は、顧客満足度・ブランド向上および売上への貢献度です。デザインの効果は金額には直結しないため、あくまでも顧客満足度やブランド向上を指標として見ることで、投資効果を計測しているようです。

このように、デザインを投資して考えることも事業存続にとって優先順位の高い選択肢であり、グローバルな社会においては、経営戦略の重要な位置付けとして、このデザイン戦略やデザイン思考、ブランディング戦略を取り入れたマーケティング活動やデザイン経営が、これからの経営者にとって、必要不可欠な条件となってきています。

しかし、デザイナーのような感性や革新的な発想は誰もが持ち合わせているわけではありません。新たな時代に入ろうとしている今こそ、経営戦略や事業計画を立てる際の上流工程においても、このデザイナーやクリエイターをうまく経営に巻き込む力も大切です。
今回テーマとして取り上げた「デザイン経営」をはじめ、この時代環境の変化に応じられる柔軟力や課題解決力こそ、これからの経営者にとって大事なテーマと言えるでしょう。

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