ブランディングには、社外向けに行う「アウターブランディング」と、社内向けに行う「インナーブランディング」とがあります。どちらもブランド開発においては欠かすことができない要素があります。その中でも近年では特に、社内でブランドの価値や強みを共有するインナーブランディングが注目されています。
このインナーブランディングとは、社内に向けてのブランディング活動です。社内向けにブランドの良さを広めることは、ブランディング普及活動にとって効果がないと考える人は多いかもしれません。しかし、社内におけるブランドのイメージが向上し、価値や強みを社員の一人一人が理解することで、社外に対してもプラスのイメージを普及することにつながります。企業のブランドをユーザーに提供しているのは、そのブランドを販売する活動によってユーザーと直接コミュニケーションを取るフロントラインの社員たちです。社員一人一人が、そのブランドの魅力について深く理解していれば、プラスのオーラがユーザーにも伝わり、結果的にはブランドの売り上げ向上にもつながるでしょう。
近年、インナーブランディングが注目されている理由
インナーブランディングが注目されている理由は、他にもあります。例えば、生産年齢人口の減少が挙げられます。生産年齢人口というのは、労働力の中核となる年齢層で、主に15歳から64歳ぐらいまでが該当します。この年齢層の人口が減少するということは、企業にとっては、働く社員の確保が難しくなるということでもあります。
労働者としては、できるだけ社内環境が良い職場で働きたいと考えるものです。自身が嫌いなものを仕事だからと割り切って販売するのではなく、自分自身も大好きな、価値や魅力を共感できるブランドの販売をしたいという人が増えるのです。つまり、インナーブランディングに力を入れることによって、社員のモチベーションを高めることができ、社内環境の向上という効果も期待できます。
そして、インナーブランディングは、多くの企業にとってプラスの効果が期待できます。しかし、その中でも特に、社員のモチベーションが上がりづらく、離職率が高い企業にとっては、インナーブランディングを行うことによって大きな問題改善効果が期待できるでしょう。
インナーブランディングを行うことは、アウターブランディングに力を入れているけれど、売上に結びついていない企業にとっても効果的です。インナーブランディングによって、社員一人ひとりをブランドのファンにすることができます。そのファンが、販売という手段によってファンの数を増やしてくれれば、結果的にブランドの売り上げ向上にもつながるでしょう。これは、「自社の売り上げの約80%程度は、約20%程度の顧客が占めている」というもので、パレートの法則とよばれており、社員のモチベーションが売り上げに大きく貢献していることを示しています。
インナーブランディングにおける具体的な方法とは?
それでは、具体的にどんな方法でインナーブランディングを進めればよいのでしょうか?
【具体例その1】
まず、1つ目には、ブランドの定義づけを徹底するという方法があります。
ブランドのコンセプトや存在意義、強みや魅力を社内で共有していなければ、ブランドに対するモチベーションを高めることは難しいでしょう。ブランドのアイデンティティを社内で共有するためには、明確な定義づけを行った上で、ブランドブックなる小冊子を社員に配布するなど、自社ブランドに対する理解を深めるための啓蒙活動を行う必要があります。
【具体例その2】
2つ目には、社員のアンケートを実地し、内部からの意見を吸い上げるという方法があります。
インナーブランディング活動をしていても、実際にどのぐらい効果があったのかは、社員の声を聞かなければわかりません。アンケートを定期的に実施することによって、社員のブランドに対する思いや熱意などをデータとして分析できますし、インナーブランディングの効果がどのぐらい出ているか藻把握しやすくなります。
【具体例その3】
3つ目には、ワークショップやクレド策定などの方法があります。
これは、ブランドの商品やサービスを、社員に実際に体現してもらうほか、類似ブランドと比較してもらうなど、ワークショップ形式を採用するのがおすすめです。体現してもらった感想やレビューは、イントラネットでシェアすることで、継続的かつ参加型のインナーブランディングが可能となります。
まとめ
インナーブランディングとは、自社内においてブランドの価値や魅力を広く普及するための活動です。
インナーブランディングは、どの企業が行ってもプラスの効果が期待できます。しかし、一朝一夕にインナーブランディングが功を奏するというわけではなく、時間がかかります。またそのためのコストもかかるため、インナーブランディングのコスパも考えなければいけないでしょう。さらに、インナーブランディングをしてもすべての社員から同様の効果が出るわけではなく、時間とコストをかけてもブランドの価値観を共有できないリスクはあります。その点も踏まえた上で、企業ごとのインナーブランディングプランニングが必要です。