‘’ブランディング‘’と聞くと、企業が製品・サービスの価値を高めるため、消費者に何かしらのアプローチをするものだと考える方も多いでしょう。
しかし、ブランディングのなかには社内の従業員にアプローチする‘’インナーブランディング‘’も存在します。
この記事では、インナーブランディングの目的やメリット・デメリットなどを紹介します。
インナーブランディングとは何か知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
インナーブランディングとは
インナーブランディングとは、従業員に企業の理念や目標を浸透させるために行われる活動のことです。
インターナルブランディング、インナーマーケティング、あるいはインターナルマーケティングと呼ばれることもあります。
主に社内報の配布や社員同士の対話の促進により実施されますが、企業によってその手法は違います。
アウターブランディングとの違い
アウターブランディングとは、社外の一般の人に対して行われるブランディングのことです。
インナーブランディングとアウターブランディングの違いは、ブランディングを行う対象者や目的、手法にあります。
それぞれの違いを、以下の表にまとめました。
インナーブランディング | アウターブランディング | |
対象者 | 自社の従業員・ステークホルダー | 一般の人 |
目的 | 従業員の意識改革 | 製品・サービスの価値向上 |
手法 | 社内報や社員同士の対話 | 広報活動やネットでの発信 |
上記のように、それぞれブランディングを行うそもそもの目的が異なるため、対象者や手法も変わってきます。
インナーブランディングを実施する意味・目的
インナーブランディングを実施する目的は、企業が掲げる目標を実現させるために従業員の意識改革を行うことです。
企業が掲げる目標はさまざまですが、たとえば、製品・サービスを顧客に購入してもらうことや提供するサービスを通じて顧客に満足してもらうことなどが考えられます。
目標を実現するためには、もちろん製品・サービス自体のブランディングを行うことも重要です。
しかし、その製品・サービス自体が持つ価値を向上させるためには、製品・サービスの開発や販売を手掛ける従業員の力が必要となります。
なぜなら、従業員がよりよいものを開発しようという意識がなければ、製品・サービスの品質も下がっていくからです。
そのためにインナーブランディングを行い、従業員に改めて企業としての目標や製品・サービスのコンセプトなどを周知し、意識を改めていく必要があります。
従業員が製品・サービスに懸ける想いが強くなるほど、開発されるものの品質が高まります。
こちらの記事では、ブランディングの実施で得られる5つの効果と測定の際の指標をご紹介しています。
あわせてご覧ください。
【関連記事】ブランディングの実施で得られる5つの効果と測定の際の指標
インナーブランディングの事例紹介
実際に、企業はどのようなインナーブランディングを実施しているのでしょうか。
ここからは、大手企業が実施した事例を2つ紹介します。
事例①スターバックス
世界最大級のコーヒーチェーンであるスターバックスで実施しているインナーブランディングは、職場環境をよくする取り組みです。
1つの業務に従業員を固定させずに、レジ打ちやドリンクづくりなどさまざまな業務を体験させることで、働きがいを与えています。
シフトも工夫して組まれており、従業員がシフトごとに違うメンバーと働けるようにすることで、飽きさせない職場環境を整えています。
また、従業員に対して顧客に品質の高いサービスを届けるための意識改革を行っていることも、スターバックスの取り組みです。
スターバックスでは、家でも職場でもない場所で一息つける空間を意味する「サードプレイス」を顧客に提供することをモットーにしています。
そのために、顧客に対して常に笑顔でドリンクを届け、快適な空間を演出するよう従業員に意識付けしています。
事例②ニチレイフーズ
冷凍食品の開発から製造、販売まで行うニチレイフーズでは、「ハミダス活動」を通してインナーブランディングを実施しています。
「ハミダス活動」は従業員に対して思いやりやチャレンジ精神、楽しく働く意識を持つように推進する活動です。
具体的には、従業員同士のコミュニケーションを活発化するために社員旅行やバーベキュー大会などを行っています。
この活動によって、ニチレイフーズは消費者庁より顧客志向の企業活動を実施している企業に対して表彰される「消費者庁長官表彰」を受賞しました。
社内でも「ハミダス」という言葉が日常的に使われるまでに従業員のあいだで広く浸透しています。
従業員のモチベーションを高くすることで、顧客満足度の高い製品を世に送り出せているのです。
インナーブランディングを実施する3つのメリット
インナーブランディングを実施すると、企業は具体的にどのようなメリットを受けられるのでしょうか。
ここからは、メリットを3つ紹介します。
メリット①企業に対する貢献度が高くなる
従業員の企業に対する貢献度が高くなることはメリットの1つです。
企業の理念や目標を従業員に対して具体的に説明することにより、従業員が一丸となって同じ方向に進めるでしょう。
また、説明を行うことで、従業員の企業に対しての好感度が増して働くモチベーションが高まります。
その結果、企業に対する貢献度も高くなると考えられます。
メリット②従業員同士の連携が強くなる
インナーブランディングを実施するメリットは、従業員間の連携が強まるという点にもあります。
従業員は同じ目標を意識するようになるため、組織として一体感が生まれ連携が強まります。
従業員同士が互いに助け合うようになるため結束が強くなり、チーム単位で行うプロジェクトの質が高まるといった効果が期待できるでしょう。
メリット③離職率が低くなる
離職率が低くなることもまた、メリットの1つだといえます。
日常的に業務がルーティーン化すると、自身がその企業で働く理由を見失ってしまうことも少なくありません。
インナーブランディングを実施し、従業員が企業の目指している方向性を理解すると、自身がその企業で働いている理由もより深く理解できるようになります。
離職率の高さが課題であった企業も、この活動を実施することで離職率を引き下げられるかもしれません。
インナーブランディングを実施する2つのデメリット
インナーブランディングを実施することで企業はさまざまなメリットを受けられますが、一方でデメリットも存在します。
ここからは、デメリットを2つ紹介します。
デメリット①効果を得られるまでに時間がかかる
明確な効果を得られるまでに時間がかかる点はデメリットだといえるでしょう。
まず、実施する前の企画段階で、じっくり時間をかけて考える必要があります。
また、企業の理念や目標を従業員に広めても、従業員の意識にすぐ浸透するとは限りません。
企画から実施、従業員までの浸透には、相応の時間がかかることを念頭に置いておく必要があります。
デメリット②すべての従業員に理解してもらうことは難しい
企業としての目標や理念を説明したとしても、すべての従業員に理解してもらうことは難しいこともデメリットだといえます。
インナーブランディングは、従業員に企業の目標を理解してもらって意識してもらうことを目的として行います。
しかし、すべての従業員が同じ考えを持つわけではないので、全員に効果を期待することは難しいでしょう。
インナーブランディングは時間がかかるものですが、すべての従業員に浸透させることが難しいという点ではデメリットだといえます。
インナーブランディングを実施したほうがよい理由
インナーブランディングにはそれぞれメリットとデメリットがありますが、デメリットよりも得られるメリットのほうが大きいため、実施することをおすすめします。
効果を得られるまでの時間はそれなりにかかりますが、一度実施すれば長期に渡って大きなメリットを受けられます。
また、従業員全体に効果を行き渡らせることは難しいですが、1人でも多くの従業員に意識付けができれば、企業にプラスに働くと期待できるでしょう。
インナーブランディングの実施により従業員に共通の目標を意識付けられる
いかがでしたでしょうか。
インナーブランディングは従業員に企業の理念や目標を浸透させるために行われるブランディングの1種です。
これを実施することで、従業員が企業の理念や目標を再確認できるようになります。
その結果、従業員の企業に対する貢献度が高まることや、従業員同士の連携が強固になることが期待できます。
そのため、企業はこの活動を積極的に実施するとよいでしょう。
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