ウィズコロナ時代、アフターコロナ時代、新たな価値創造が求められるなか必要不可欠な戦略として注目されている「ブランド価値創造」に焦点を当てながら中小企業におけるブランド力向上のヒントを “ブランディングレポート” として全8回にわたりお届けします。
“Ame to Tsuchi, Inc. Branding Report”
ブランディングにおいて、デザインが果たす役割は大きく、また、その作成にあたっては、さまざまな角度からの検討を要します。と言うのも、ブランディングにおけるデザインは、ブランディングの中心にあるものを視覚化したものであり、ブランディングのはじめ、そして、成功までの長い道のりを共にするものだからです。今回は、デザインでブランド力を強化する手法について見ていくことにしましょう。
ブランディングにおけるデザインの効果
ブランディングは自社、自社の商品、自社のサービスを多くの人に認知してもらうことを目標にしていますが、単に知ってもらうということではなく、自社、自社の商品、自社のサービスの「価値」を認知してもらうことが最終目標です。
しかし、例えば商品が持つ良さのうち、機能面については数値を挙げてアピールすることができるとして、その商品の魅力やその商品が与える喜びといったものについては、数値だけで伝えるのは困難です。そこで求められるのがデザインです。
自社のブランディングについて多くの経営者がロゴマークの刷新を考えるのも、こうしたデザインが持つ力を考えてのことでしょう。デザインには、ブランドを特徴づけ、際立たせる力があるということです。
デザインでブランド力を強化させる手法
しかし、その一方、ロゴマークの刷新だけでブランディングに成功するということはありません。ブランディングは、考え方だけを取り上げれば、それほど難しいものではありません。
自社の強みを洗い出し、そのなかの何を、誰に、どのように伝えるかということが中心課題になります。問題になるのは、自社の強みを洗い出すという作業、誰に伝えるかというターゲットの明確化、どのように伝えるかという方法の選択をきちんと行うところにあります。
地域ブランディングの成功例として有名な「今治タオル」の場合、品質の良さを徹底的にアピールするという観点から、産地に対し品質基準を厳格に設けて品質の統一化を図り、ターゲットは価格より本物を重視する本物志向層に定めました。
また、国際的な展示会に出品し「made in japan」の優秀性をアピールするという方法もとっています。
さて、そのブランドロゴはどうでしょう。赤地の正方形に丸が白く抜かれ、その下に三本の青い線があり、「imabari towel Japan」の文字が配されています。「今治タオル」のWEBサイトの説明では、「赤」は「活動的、情熱的」などを表し、「今治タオルが日本を象徴する商品のひとつであるという位置づけ」という説明があります。赤地に白丸のデザインは、白地に赤い丸の日本の旗をイメージさせる狙いもあるでしょう。
そして「青」については、「品質に対する安全と安心、信頼、歴史と伝統」などをイメージさせると説明されています。三本の青い線は、瀬戸内海のイメージも担っているように見えます。「白」は、「やさしさ、清らかさ、清潔感」などを表すという説明があり、今治タオルもまた柄物ではなく無地に統一されています。
今治タオルの例を見てもわかるように、ブランディングにおけるデザインは、ブランディングの基本方針や計画と密接に関わるものであり、何を、誰に、どのように伝えるかというブランディングの中心課題を視覚化するものです。そのため、デザイナーにはブランディングについての十分な理解が求められます。
ブランド力強化につながるデザイン
デザインにとって「色」は重要ですが、ブランドデザインにおいて「色」はより多くの意味を持つことになります。
銀行業界のブランドデザインを見てみましょう。ブランドのシンボルカラーは、三菱UFJ銀行は「赤」、みずほ銀行は「青」、三井住友銀行は「緑」です。街なかで現金を引き出そうとする際、三菱UFJ銀行のキャッシュカードを持っている人は「赤」の看板を探し、みずほ銀行であれば「青」、三井住友銀行であれば「緑」の看板を探すことになります。
そして、三菱UFJ銀行の「赤」は、「金融サービスをダイナミックに変えていく活力」や「お客さま一人ひとりに向き合っていく情熱を」を示し、みずほ銀行の「青」は、「信頼、誠実、ワールドスケール」や「お客さまとのリレーションシップ」、三井住友銀行の「緑」は、「若々しさ、知性、やさしさ」や「伝統、信頼、安定感」などを表すとされています。
つまり、「色」ひとつをとっても、それは各銀行の理念や経営目標を示すものであり、各銀行を特徴づける重要な役割を担っているわけです。そして、その「色」は各銀行の看板、銀行員が持つ名刺、金融商品の案内パンフレットなど、すべてにおいて統一されています。
ブランディングにおいては、さまざまなメディアを通した発信が不可欠ですが、その場合も「色」は統一されたものである必要があります。ブランディングにおいてデザインが担当する力は、この統一性によって、より十全に発揮されることになります。
デザインはブランド力の強化に大きな役割を果たします。そして、そのデザインは、ブランディングを成功させる長い道のりと共にあるものです。
これは大企業のブランディングについてのみ言えることではなく、中小企業のブランディングにおいても大切なことです。それだけにデザインの決定までには、さまざまな意見交換、さまざまな角度からの検討を要することになります。
最後に、いまも最前線で戦う医療従事者への敬意を表し、「ブランドの芽が絶えぬよう、戦う勇気、続ける勇気」を少しでも皆様へ届けられることを願います。
次回、2月14日配信予定の第10回は “BtoB企業のブランディング” についてお届けします。
どうぞお楽しみに。
コロナ渦の「ブランド再構築やブランドの再定義」など、リ・ブランディングをお考えの皆様。
そして、「業態シフトやブランドシフト」など、新ブランドをお考えの皆様。
緊急事態宣言が解除された後も “新しい生活様式” を踏まえた早期の備えが必要です。
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