企業を取り巻く環境や事業が変化するなかで、会社としての強みや方向性が伝わりにくくなったり、社内外で企業に対する認識にずれが生まれたりすることがあります。また、ロゴやWebサイトなどの表現が、現在の企業の姿と合わなくなることもあります。こうした課題に対して、企業としての価値や目指す方向を整理し、一貫したブランドとして社内外へ伝えていく取り組みが「コーポレートブランディング」です。
この記事では、コーポレートブランディングの意味や目的、必要になるタイミング、具体的な進め方について解説します。
コーポレートブランディングとは
コーポレートブランディングは、企業が大切にする価値や目指す方向を明確にし、企業としてのブランドを形成していく取り組みです。
対象となるのは商品やサービスだけではありません。企業の考え方や事業、そこで働く人、顧客や社会との関係などを含めて、「どのような企業として認識されたいのか」を考え、言葉やデザイン、さまざまなコミュニケーションへ反映していきます。「コーポレートブランド」が、企業に対して顧客や社会、従業員などが抱くイメージや認識、そこから生まれる価値を含むものであるのに対し、「コーポレートブランディング」は、そのブランドを形成していくための継続的な取り組みを指します。
コーポレートブランディングを行う目的
コーポレートブランディングの目的は、企業をよく見せることではありません。
企業が持つ価値を明確にし、それを社内外へ一貫して伝えることで、企業に対する理解や認識を形成していくことにあります。企業は、顧客だけでなく、従業員、取引先、採用候補者、地域や社会など、さまざまな人との関係によって成り立っています。企業として大切にすることが明確になれば、発信するメッセージやデザインだけでなく、営業、採用、広報などにも共通した軸を持ちやすくなります。その積み重ねによって企業としての一貫性が生まれ、社内外からの理解や信頼につながっていきます。
コーポレートブランドを高めることで企業にもたらされるメリットや効果については、「コーポレートブランドを高める5つのメリット」で詳しく紹介しています。
コーポレートブランディングが必要になるタイミング
コーポレートブランディングは、企業を新しく見せたいときだけに行うものではありません。事業や組織、経営環境の変化によって、これまでの企業像と現在の姿にずれが生まれたときは、企業としての価値や目指す方向を改めて整理するタイミングといえます。
たとえば、次のような状況です。
- 事業内容が変化し、現在の企業イメージと合わなくなっている
- 会社の強みや価値をうまく説明できない
- 複数の事業やサービスが増え、企業全体の方向性が分かりにくくなっている
- 事業拡大や組織の成長によって、社内の認識にずれが生まれている
- 経営方針の変更や事業承継を機に、企業としての方向性を整理したい
- ロゴやWebサイト、営業・採用・広報などの表現に一貫性がなくなっている
こうした課題は、ロゴやWebサイトなど個別のデザインだけを変更しても、根本的な解決につながらない場合があります。
まず企業として何を大切にし、どのような価値を提供し、これからどこを目指すのかを整理する。そのうえで、必要な言葉やデザイン、コミュニケーションへつなげていくことが重要です。
コーポレートブランディングの進め方
コーポレートブランディングの進め方は、企業の規模や課題によって異なります。
すべての企業が同じ手順を踏む必要はありませんが、基本的には次の流れで考えることができます。
目的を整理する → 現状を把握する → 企業の価値と方向性を整理する → 伝え方を設計する → 表現する → 運用する
STEP 01 目的と課題を整理する
最初に、「なぜ今、コーポレートブランディングを行うのか」を明確にします。企業イメージを変えたい、事業の変化を伝えたい、組織としての一体感を高めたい、採用や営業で企業の価値を伝えやすくしたいなど、企業によって背景は異なります。この段階で重要なのは、いきなり「ロゴを変える」「Webサイトをリニューアルする」といった制作物から考え始めないことです。まず現在抱えている課題と、コーポレートブランディングによってどのような状態を目指すのかを整理します。また、企業全体に関わる取り組みであるため、担当部署だけで進めるのではなく、経営者や経営層が目的や方向性を共有しておくことも重要です。
STEP 02 企業の現状を把握する
次に、現在の企業がどのように成り立ち、社内外からどのように認識されているのかを把握します。
確認する対象は企業によって異なりますが、たとえば次のようなものがあります。
- 経営者・経営層の考え
- 企業理念やビジョン
- 事業内容や事業戦略
- 商品・サービス
- 会社案内やWebサイトなど既存の発信物
- 従業員の認識
- 顧客や取引先からの評価
- 競合企業との違い
- 現在使用しているロゴやデザイン
大切なのは、企業側が考えている自社の姿だけを見るのではなく、実際に社内外からどのように認識されているのかとの違いを見ることです。
必要に応じて、既存資料の整理、経営者や従業員へのヒアリング、顧客や取引先などの声、既存デザインの確認などを行います。
STEP 03 企業の価値と方向性を整理する
現状を把握したら、集めた情報をもとに、企業として何を大切にし、どのような価値を提供し、これからどこを目指すのかを整理します。ここでは、単に耳ざわりのよい言葉をつくるのではなく、経営や事業の実態とつながっていることが重要です。企業理念、存在意義、ビジョン、価値観、強みなど、必要な要素を整理しながら、企業としての判断やコミュニケーションの軸を明確にしていきます。このように企業としての考え方や存在のあり方を整理することは、CI(コーポレート・アイデンティティ)の形成にもつながります。
STEP 04 ブランドとして伝える内容を設計する
企業としての価値や方向性が整理できたら、それを社内外へどのように伝えるかを考えます。同じ企業でも、顧客、取引先、従業員、採用候補者などによって、必要とする情報や企業との接点は異なります。そのため、整理した企業の価値をそのまま発信するのではなく、誰に、何を、どのように伝えるのかを設計することが必要です。企業として伝えるメッセージ、言葉の使い方、情報の優先順位、各接点でのコミュニケーションなどを整理し、一貫した企業像が伝わる状態をつくります。
STEP 05 ロゴ・Webなどの表現へ落とし込む
ブランドとして伝える内容が決まったら、具体的な表現へ落とし込みます。
たとえば、次のようなものがあります。
- コーポレートロゴ
- ブランドカラーや書体
- Webサイト
- 会社案内
- 営業資料
- 採用ツール
- 映像
- 各種グラフィック
重要なのは、それぞれを個別にデザインするのではなく、これまでに整理した企業の価値や伝え方を共通の軸として表現することです。
ロゴだけをVI(ビジュアル・アイデンティティ)と捉えるのではなく、企業に触れるさまざまな接点で、一貫したブランドとして認識できる状態をつくります。
STEP 06 社内外へ浸透させ、継続的に運用する
コーポレートブランディングは、ロゴやWebサイトを公開した時点で終わるものではありません。整理した考え方やブランドの表現を社内で共有し、営業、採用、広報、商品・サービスなど、実際の企業活動へ反映していく必要があります。また、企業や事業を取り巻く環境は変化します。ブランドとして大切にする軸を維持しながら、事業や組織、市場の変化に応じて表現やコミュニケーションを見直していくことも重要です。ブランドをつくることと、その後も一貫して育てていくことを、一つの流れとして考えていきます。
コーポレートブランディングは誰が進めるのか
コーポレートブランディングは、広報やデザインを担当する部署だけで進めるものではありません。企業として何を大切にし、どのような価値を提供し、これからどこを目指すのかという経営や事業に関わるテーマを扱うため、経営者や経営層が関わることが重要です。そのうえで、企業の規模や目的に応じて、経営企画、広報、マーケティング、人事、営業など、必要な部門の担当者と連携しながら進めます。すべてを社内だけで進めることもできますが、自社について考えるほど、これまでの慣習や社内の共通認識に影響され、企業の価値や課題を客観的に捉えることが難しくなる場合もあります。そのような場合には、外部の専門家を加えることで、経営者や従業員へのヒアリング、情報の整理、ブランドとしての言語化、デザインやコミュニケーションへの展開などを、第三者の視点から進めやすくなります。外部の専門家を活用する場合も、すべてを任せるのではなく、企業側の考えや意思を起点に進めることが重要です。社内と外部がそれぞれの役割を持つことで、企業の実態と乖離しないブランドづくりにつながります。
コーポレートブランディングで大切なこと
コーポレートブランディングというと、ロゴの変更やWebサイトのリニューアルなど、目に見えるデザインを思い浮かべることがあります。しかし、デザインを変えること自体が目的ではありません。企業としての考え方や価値が整理されていなければ、「何を伝えるためのデザインなのか」という基準がなく、発信や表現にばらつきが生まれやすくなります。大切なのは、企業について理解し、価値や方向性を整理し、伝え方を設計したうえで、言葉やデザインとして表現すること。そして、それを実際の企業活動のなかで継続していくことです。
まとめ
コーポレートブランディングは、企業の見た目やイメージだけを変える取り組みではありません。企業が持つ価値や目指す方向を整理し、言葉やデザイン、さまざまな企業活動を通じて一貫して伝えていく取り組みです。事業や組織、経営環境の変化によって、これまでの企業像と現在の姿にずれが生まれている場合は、企業ブランドを見直す一つのタイミングといえます。
まずは「何をつくるか」ではなく、「企業として何を伝える必要があるのか」を整理することから始めることが大切です。
企業のブランディングをご検討の方へ
あめとつち株式会社では、企業や事業が持つ価値を整理し、ブランドとして伝えるための設計から、ロゴ、Webサイト、グラフィック、映像などのクリエイティブまで、一貫したブランドづくりを支援しています。
企業として何を伝えるべきか整理したい、現在の企業イメージを見直したい、ブランドとして一貫した表現へ整えたいなど、課題の内容に応じて必要な支援範囲をご提案します。