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近年のCI展開事例と考察

CIという言葉を耳にされたことがありますでしょうか?
正式名称はコーポレート・アイデンティティの略で、「企業の特性を、統一されたビジュアルやメッセージで内外に発信し、共有してもらうことで、企業的価値を高めること」を指します。
一般的にCIというと企業のロゴデザインが筆頭に挙げられますが現在ではデジタルの普及や媒体の多様性が広がり、企業のスタンスやイメージを浸透させるための様々手法が試みられています。

例として、黒い猫がトレードマークのヤマトホールディングスが今年の4月1日から1957年にロゴマークを制定して以来、初めて大々的にデザインのリニューアルを行うことになっています。デザインを担当されたのは日本デザインセンター 代表取締役社長の原 研哉氏です。

©︎ヤマトホールディングス

左が旧ロゴ、右が新しくデザインされたロゴマークです。一見あまり変わり映えがしないように見えるかも知れません。

しかし、よく観察してみると全体のクロネコのフォルムがシンプルに整えられており、細かい線を簡略化することで小さな媒体へ印刷したときやスマートフォンなどで表示された際にもはっきりと見えるように細かな調整がなされています。

そして今回、上記の企業ロゴと合わせて下記の「アドバンスマーク」が新たに加わりました。

©︎ヤマトホールディングス

「アドバンスマーク」は、ヤマトホールディングスが新たな価値提供の実現に挑戦する事業を象徴するマークとされ、顧客と地域に根差す集配車両には、引き続き、ネコマークを展開。そしてビジネス領域や幹線で使用する大型車両には、宅急便に留まらないネットワークの多機能化、高付加価値化のシンボルとして、「アドバンスマーク」を採用する、となっています。

©︎ヤマトホールディングス
©︎ヤマトホールディングス

現代ではデジタルの進化・普及によって顧客、ユーザーが情報を目に入れる機会が圧倒的に増えました。そのため複雑かつ多様化している現代のインフラやコミュニケーションの施策に対応するためには、従来のように「企業ロゴ一本で」ブランドを訴求していくことが難しくなってきています。

ヤマトホールディングスの例のように、さまざまな媒体や新しいサービス、目的によってロゴマークも使い分けていく必要が出てきています。

そして近年、ロゴマークと同様に重要になってきているのが「フォント」です。

たとえば、「楽天」では近年“楽天ブランドの統一性と多様性の双方を表現する”ことを目的としてオリジナルのフォントが開発されました。デザインの総合ディレクションは佐藤可士和氏。フォントデザインはロンドンの著名なフォントスタジオDalton Maag社が担当しています。

©︎楽天

フォントデザインのコンセプトはそれぞれ、基本形となるSans、上品さを表現するSerif、楽しさや可愛らしさを表現するRounded、力強さを表現するCondensed。それぞれ異なる「ボイス」(メッセージ性)を醸す4つの書体とされています。

なぜ「フォント」が重要なのか?

現代ではユーザー個々人が気軽に情報を発信できるのと同様に、「ブランド」も個人がひと昔前に比べて気軽につくれるようになってきました。

またWEBサイトをつくる上でも良質なフォントがデフォルトで選択できたり、ツールのデザインも、安価である程度の品質を担保できるクラウドソーシングなどのデザインサービスも出てきました。

そうなってくると既存のフォントサービスではオリジナリティやブランドの独自性を保持することが難しく、上記のようなデザインサービスが増えてきたためにパッと見で大きく他ブランドと差をつけていくことができなくなってきたのです。

ではどこで「差」をつけていくのか?

それこそが「ブランドボイス」といわれる“ブランドの声”を代弁するフォントになります。フォントというものは派手さはありませんが「情報として読ませるデザイン」ですので広告よりも自然にユーザーの記憶に残りやすいという特性があります。繰り返し繰り返し、適切に「ブランドボイス」を使用していくことによって顧客、ユーザーの記憶にブランドの印象を刷り込んでいくことができるのです。

「見た目」で差をつけにくくなってきた現代では、ディテールや差異にこだわることが非常に重要です。そして今回の例のように、従来の企業ロゴや単純な広告ではCIが確立できなくなってきました。もちろんロゴマークや広告自体はブランドを表現していく上でいまも有効な手法です。しかしその運用方法やルールづくりには工夫が必要になっています。

大切なのはブランドメッセージを正しいカタチに落とし込み、現代のニーズに応じたルールを設計したうえで多面的に訴求していくことが現代のCI確立のために重要なのです。

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