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経営指標を”数字”から”センス”へ変えてみる

前回のタイムラインでは「デザイン経営宣言から紐解く経営の未来」と題して経営へのデザインの汲み取り方や考え方をご紹介させて頂きました。
今回はデザイン経営の考え方からもう一歩踏み込んでお話ししたいと思います。

よく言われている言葉かもしれませんが「ビジョンが大切という考えを持つこと」がデザイン経営を活用していく最大のポイントになります。
前回お話しした「モノ・コトをより良くする」方法論であり技術というデザインの思考法は、テクノロジーと社会との関係性を考える際にも紐付けられてますます重要になってくると考えられています。
例えば、2015年に行われたオーストリアのリンツで開催される芸術・先端技術・文化の祭典で知られるメディアアートに関する世界的なイベント「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」では、自動運転車が当たり前のものとなった未来において、人と車の関係はどうあるべきかということが発表されました。
アルスエレクトロニカが発表した、人間をきちんと客観視しながら観察して、どうすればテクノロジーとのより良い関係を築けるのか、という考え方はまさにデザイン的な思考です。
技術の進歩や利便性の追求だけを考えていくと、最先端のテクノロジーが人の暮らしや気持ちを支配するということにもなりかねません。
そのときにテクノロジーを敬遠するのではなく、“より良い”かたちで社会と関係を結んでいくための方法を考えることがデザインであると考えます。

今の企業に求められることをまとめると下記のサイクルを繰り返していくことです。

まさに終わりのない「Best(完璧)」ではなく「Better(より良く)」のデザイン思考が必要とされています。

また、経営に携わっている方であれば「ビジョン」という「数字」に比べて実態のない曖昧なものを指標としていくのは不安に感じるかもしれません。
しかし近年、似たようなことは経営学の最前線でも言われています。
それが経営学者の入山章栄氏が紹介している「センスメイキング理論」になります。
この理論は組織心理学者のカール・ワイク氏を中心に発展してきた理論で、日本語に訳すと「意味付け・納得」となります。
社会の価値観の移ろいや不確実性が大きくなったことで、少しの先行きが不透明な時代においては、“正しい答え”を求めても得られない状況が今後も増えていきます。
例えば、人工知能(AI)に関しても「人間と共存できる」と言う人がいれば、「人間の脅威になる」と言う人もいます。
いま現在、人工知能の技術と向き合う経営者はどちらを判断の根拠とすべきかは絶対的な正解はありません。
このような複雑な状況から、自分なりに意味付けを行い周囲を巻き込んでいくことが「センスメイキング」であり、それは現代の経営者に欠かせない能力になってきています。
さらに今の世の中で客観的に見て「ここを攻めれば絶対に成功する」という大きな市場は存在しないと言えます。
だからこそ、これまでの経営では扱われてこなかったセンス(人の感性)というものを主にしながら、それを補っていくために数字を使っていくという逆転した思考や方法が必要ではないかと私たちは考えます。
そして上記のような仮説や提言が「デザイン経営」には込められていると思っています。

デザインには「ビジョン」や「センス」といった曖昧なものを少しずつ見える化していく技術があります。
これからの時代は、デザイナーと経営者がより近い距離感で手を取り合いながら顧客やユーザーを巻き込んでブランドを共創していく仕事が必要なのです。

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