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コロナを越えて、本物だけが残る両極の時代へ

昨今のコロナ渦でさまざまな生活の変化や、経済の動向も大きく変わってきました。
デザインの世界でも従来のその時々で施策されていた「広告・キャンペーン型」から、しっかりと根元の課題を見直し、構築していく「ブランド型」へと経営をシフトさせる企業が増えてきていると実感します。
また、コンサルティングの業界でもデザインと同様に、企業の事業構成、つまりはBI(ブランドアイデンティティ)を再構成する事案が増えてきていると聞きます。
多くの企業はポストコロナによって変化した、ニューノーマルに対応するために既存の事業の見直しが必須であることと、従来取り組んできたパイが縮小していく中でさらなる成長を模索するために新規事業や新しい取り組みにも挑戦していく動きが出ています。
そのために、自社の存在意義にあらためて向き合い、根本的に問い直していくというテーマに、経営者が正面から取り組むようになってきていると思います。
このような変化を含めて、“いま”という時代を「両極の時代」として捉えることができると考えます。

ひと昔前であれば「安かろう悪かろう」でも、消費者はある程度寛容な部分がありましたが、今は「究極に安くて品質も良い」商品でなければ人々に響かなくなりました。
たとえば、大手衣料メーカーの筆頭であるユニクロは、ひとつの商品の型を徹底的に長く売る戦略をとっています。
フリースに代表されるような商品であれば10年以上継続して展開していますが、こうすることで商品のロットを「億単位」で生産することができます。
そうなると、高品質な素材を使用しても競合他社よりも圧倒的に安く提供することが可能になっています。
そのためにユニクロは、同じフリースでも毎年少しずつシルエットや素材を時代に合わせてアップデートしていくことで“価格と品質の圧倒さ”から世界中の消費者に常に新鮮な印象で売り続けることができています。

そして衣料の世界でいえば、ユニクロと対局の手法をとっているのがエルメスです。
あまり知られていないことかもしれませんが、エルメスの商品は1商品につき1人の職人がすべての工程を担当しています。
そのやり方にすると職人1人あたりの月単位の生産数はバッグであれば10個が限界と言われています。
またエルメスは全従業員の5割以上が生産の人間である職人が占めています。
これは生産性や効率を考えても競合他社に比べて異常ともいえる割合です。
通常であれば、商品を売るための販売員が7割以上、生産の人員は3割程度と言われています。
このような生産性を度外視した常識はずれの経営手法でもエルメスが採算をとれているのは、一つひとつの商品のクオリティが高いのはもちろんですが、
「エルメスは買った瞬間から価値が上がる」と言われているように、すべての商品がオートクチュールに近い製法のため、時代の流行りすたりに左右されず、値崩れがしにくいという点が挙げられます。
また、エルメスの商品はビンテージの物であればすでに再現できる職人が現存しないためロストテクノロジーとなった品物も多く、新品の物よりも価値が高くなっている商品も少なくありません。
そして今現在の商品からも今後は技術を保有している職人が引退して、ロストテクノロジーの商品が出てくるため“品質と希少性の圧倒さ”から、さらに価値が上がっていくと予想されています。

上記のユニクロとエルメスの例からも分かるように「圧倒的な両極性」がないと企業・ブランドが生き残っていくのが難しい時代になりました。
両極性というのは効率や生産性からみる「物としての商品」のみを指してはいません。
日本では文化性や情緒性は経済的に評価されづらく、無形のものにお金を払う意識が希薄です。
デザインや文化というと「それはお金になるの?」みたいな反応をする経営者も少なくないと思います。
しかし、文化はちゃんとお金になります。
たとえば、スターバックスが“本質として何を売っているのか”を考察すれば明らかです。
スターバックスが日本に初出店したのは1996年ですが、その当時もしどこかのベンチャー企業がスターバックスと同じビジネスモデルをデータと理屈だけでプレゼンしていたとしたら、誰も投資はしなかったはずです。
なぜなら、店内でたばこも吸えないし、値段も高い。そんなコーヒーショップが当たるのは無理だと思われるからです。
しかし、スターバックスの普及ぶりは周知の通りです。それはなぜか。シアトルで生まれたコーヒーの「文化」をうまく日本のマーケットに合わせて移植したからです。
その「文化」に無意識のうちに“共感”した顧客がファンになり、世界中に普及していきました。
Appleが売っているのも、パソコンやスマートフォンでは無く、「文化」でありブランドの世界観への“共感”です。

いま日本の多くの企業は、コロナ渦を起点にした急速なデジタル化の中で「モノの売り切り」という従来の方法から、「サービス化」を主軸とした方法へと一斉にかじを切っています。
しかし、ただ単にサービス化へのかじを切るだけでは、単なる「モノとサービスの抱き合わせ」になってしまいます。
これだけでは企業・ブランドが多くのファンを獲得していくことは難しいでしょう。
だからこそ、モノとサービスの間に“文化”を取り入れてそれぞれの“共感”を生み出していくことが、付加価値やビジネスでの成功確率を高める要因になります。
そういった意識を持ってかじを切っていくことで、両極の一端に企業・ブランドがしっかりと軸を持って立って、唯一無二の存在を確立していくことができるのです。

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